弥生丸が麻雀を覚えたのは高校生の頃だった。
当時はただ、牌を三つ集めることだけに集中していたように思う。
スジ待ちも知らなかったし、おりることもしなかった。
だから、大きな授業料を払った。
麻雀のコラムや麻雀の雑誌、麻雀の漫画もよく読んだけれど、特定の人物の書籍を読んだことはいままでになかった。
それを今回初めて手にとった。「ムツゴロウ麻雀記」だ。
動物好きで有名なムツゴロウさんであるが、麻雀好きでも有名である。つい先日もテレビで「僕は一週間寝ないで麻雀を打ったことがある」と言っていた。麻雀を打つ者ならば、知らない者はいないだろう。
日本プロ麻雀連盟の小島武夫さんを押さえて、最強とも名高い。麻雀格闘倶楽部では☆五つのプロとして登場する。
実をいうと、かなり適当に選んだ書籍であった。たまたま目についたから購入したという本だ。しかし意に反し、物凄く楽しく読めた。
弥生丸が面白いと判断する書籍は、その内容ももちろんのことだが、それよりも文章から滲み出る人柄を好きになる。
動物好きなムツゴロウさんであるが、動物が好きな人に悪い人はいないといったところだろうか。
人柄の良さや、なんとも言えない庶民的なところに好感を抱いた。
読みすすめていくと、感心させることばかりだった。なにが凄いのかというと、とにかく相手の待ちを読む技術が凄い。
四索が出てきたから相手はなに待ちだとか、敵の手の中から出てきた牌をとにかく覚えている。
三人の相手がいて、さらに自分の牌の面倒も見なくてはいけないのに、ここまではビギナーにはなかなか出来ないないのではないかと思う。
ここまで出来てプロなのだなぁと感心した。
弥生丸が注視しているのは、せいぜい親の捨て牌と、ポンやチーをしたあとに出てくる牌くらいだ。
ムツゴロウさんの雀風としては、相手によって打ち方を変えることもままあるのだが、基本的には河に細工をするタイプだ。
例えば5566と配牌にあったとすると、早い段階で5と6を一枚ずつ切り出していく。これにより、47が出やすくなる。
ツモを狙う麻雀ではなく、ロンを狙う麻雀だ。
これにはムツゴロウさんの持論があって、麻雀は相手の牌を利用するものだというのだ。
ツモ狙いならばチャンスは一回しかないが、ロン狙いならば、チャンスは自分のツモ順を含めると四回もある。
確率的に考えても、なるほどなぁと思わせる。
弥生丸は手広く構えて打つタイプだが、自分の打ち方を改めてさせる文節であった。
最後に「ムツゴロウ麻雀記」を読んで、もっとも気に入った一文を紹介する。
「相手が白、発と鳴いたなら、そこに中を突っ込まなければ面白くない」
解説は避けよう。
確かにその通りだな、と思う弥生丸である。