真保裕一さん「奪取」書評

真保裕一さんも、東野圭吾さんと同じく江戸川乱歩賞を受賞してデビューした作家さんです。東野圭吾さんとは師弟関係のような関係に当たるのではないかと勝手に思っています。理由は真保裕一さんがデビューして間もなく、東野圭吾さんに出版業界のアドバイスを頂いているからです。ただそれだけの理由です(笑

面白い本というものは止まらなくなるものです。一ページを読んだら、次の一ページを読みたくなる。一行を読んだら、次の一行を読みたくなる。「奪取」はそんな本でした。上下巻に分かれている長編にもかかわらず、僕は二日で読み終えました。僕は読むのが遅い方なので、早い方なら一日で読み終えてしまうかもしれません。

内容はズバリ偽札作りです。偽札、と聞いただけで、ワクワクする方もいるのではないでしょうか? 危険な香りがプンプンします。日常では絶対に体験できないことを、疑似体験できる。それが物語のいいところですよね。

それに、これは小説のいいところだと思うのですが、小説の中でならば何をしても犯罪にはなりません。誰かを殴ろうが、誰と結婚しようが自由です。日常にあるあらゆる制約をふりほどき、本当に自由な世界を構築できる。僕はそんな小説の世界に惹かれました。一歩間違えれば夢遊病者です(笑

奪取は主人公の男が、偽札を作り、常日頃から本物の札に触れている銀行員を騙そうとします。驚くべきは、実に緻密な描写です。すかしの作り方、お札をする印刷機についてなど、本当に詳しく描かれています。僕はお札の原料が、ミツマタという木からできていることを「奪取」を読んで初めて知りました。

お札というものは、本当に一般人には偽造できないように作られているのだなと、改めて知らされました。ただ「奪取」に描かれている一万円札は旧一万円札なので、現在の一万円札とは違います。

「奪取」を読んでもっとも好きな部分は、ラストの一ページです。ここは賛否両論わかれるようですが、僕はやられた感満載でした。ミステリー小説を読んでいると、いい意味で騙されたいもので「騙された!」と、悔しくも嬉しくありました。

東野圭吾さんの「秘密」もラスト一ページが一番好きです。ラスト一ページのために、膨大な量の物語を構築しているのではないなと思わされます。物語が進むに連れて盛り上げていく技術は本当に凄いものです。

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