20年間無敗の雀鬼として恐れられた桜井章一さん。麻雀を打つ者で、知らない人は少ないだろう。よく漫画であるような、高レートの裏麻雀界で代打ちなどを経験している。現実にあることなのだなと、初めて知った。
麻雀に関する本だとばかり思って手に取ったのだが、内容は麻雀ではなく、タイトル通り「恐れない技術」について書かれてある。
これまでに様々な自己啓発書や実用書を読んできたが、そのどれもと異なった内容で、ひどく共感を覚えた。感動したといってもいいかもしれない。
だいたい実用書といえば、成功する秘訣や、心構えなど、こと細かに書かれてあることが多い。そんなの無理だ、とまではいかなくとも、体や心に幾ばくかの負担をかけるような内容ばかりだ。徹底した自己管理、たった一秒も無駄にせず、隙間時間を大切にすることなど。確かにこのように高い意識を持って徹底してやれば、夢に届くのかもしれない。しかし言うは安し、実際に実践し続けていくのは簡単なことじゃないし、本当にこのような人間になっていいのかと疑ってしまう。
しかし桜井章一さんは一転して「だめでも別にいいじゃないか」と言っている。ある一部の人からは、そんな考えは甘えだとか、ダメでいいわけがないと言われてしまいそうだが、私はこの考えに同調した。本当にダメでも別にいいじゃないかと思う。夢を真剣に追いかけていた頃は、本当に自分自身が尖っていたように思う。成功者を妬み、負けるもんかと歯を食いしばった。結果、心に負担をかけ、人としての余裕をどんどんなくしていったように思う。技術は磨けても、人間としてはどんどんマイナス方向に進化していた。だから、本気でダメでも別にいいじゃないかと思う。そちらの方が心にゆとりもでき、間違いなく幸せだ。
桜井章一さんは、本当におおらかな人間だ。誰でもあろうとも門を叩けば迎えてくれるような、フトコロの大きさや暖かさを痛烈に感じた。上手く表現できないが、好きだ。好きである、桜井章一さんが。そしてきっとこう思うのは、私だけじゃない。つまり桜井章一さんを好きな人はたくさんいるということだ。自分を好きな人達で囲まれる桜井章一さんの人生は、本当に幸せなんだろうなと思った。
初めてコメントさせていただきます。
この度は、弊社文庫をお取り上げくださいまして、誠にありがとうございます。
また、とても嬉しい書評を書いてくださり、担当編集者として、これ以上の幸せはございません。
今後とも何とぞよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
ソフトバンク クリエイティブ
学芸書籍編集部 田中孝行
担当編集者さんからコメントがあるなんてびっくりです。素晴らしい書籍をありがとうございました。